夏になり暑い日が続くと「疲れがとれない」「食欲がわかない」などの不調を感じることがあります。暑い夏を乗り越えるために良いとされるサプリメントや健康食品について発信することを考える方も多いのではないでしょうか?しかし、健康食品には医薬品と誤認されるような効果や効能の表示や広告は薬機法(旧薬事法)などの法律によって規制されています。
そこで、薬機法(旧薬事法)に則った表現について解説します。
「夏バテ」とは医学用語ではなく、暑い時期に「身体がだるい」「眠れない」「食欲がなくなる」などと感じる様々な不調の総称を指します。これらの症状が進むと頭痛や脱水、身体の動きが悪くなるなど日々の生活にも影響を及ぼしかねません。
夏バテは、室内外の温度差や睡眠不足による自律神経の乱れや発汗などによって起こる脱水、必要な栄養素がうまく摂れないことなどが要因とされています。夏バテの予防には、熱中症対策と併せて夏を健康的に乗り越えるために栄養バランスのとれた食生活が重要なポイントといえるでしょう。
夏に向けて、夏バテに関連する健康食品についての発信や広告などを目にする機会が増えてきます。薬機法(旧薬事法)は、基本的には医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の品質・有効性および安全性を確保することを目的とした法律で、健康食品は薬機法(旧薬事法)の規制からは外れています。
口から摂取するものは大きく分けて「食品」と「医薬品・医薬部外品・再生医療等製品」とに分けられます。医薬品に該当するかどうかの基準は、「46通知」と呼ばれる「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」で定められ、医薬品の成分を指定する成分本質、身体の変化を表現する効能効果、医薬品としての形状や用法用量の明示などが基準として示されています。
この基準に該当するものが「医薬品」と判断され、「医薬品」としての承認を得ていないものは「無承認医薬品」「無許可医薬品」としてみなされ薬機法(旧薬事法)に触れてしまうのです。
つまり、一般食品であっても医薬品的な効果や効能を標ぼうすると医薬品と誤認されるおそれがあり薬機法に抵触します。
いわゆる健康食品と呼ばれるものは、一般的な食品と同じように栄養補給や健康の維持といった目的しか持たせることができないのです。予防に効果があると表示できる製品は医薬品として承認されたものに限られているので、予防に役立つことを表現することや用法用量を明記すると医薬品とみなされてしまうわけです。
ただし、機能性表示食品やトクホと呼ばれる特定保健用食品は、その限りではありません。また、薬機法(旧薬事法)的に問題のない表現であっても、食品の説明には食品表示法や食品衛生法、健康増進法、景品表示法など、様々な法律が関係してくるため注意が必要です。
薬機法(旧薬事法)において規制の対象となる表示や広告には、製品の容器や包装、チラシやパンフレット、テレビやラジオなどのメディアに掲載される広告だけでなく、店内のつり広告や小冊子、代理店などで配布される商品関連の資料も該当します。
また、使用経験者の体験談、店頭や訪問先などで行われる口頭での説明も対象となるため、注意が必要です。「生活習慣病の予防」や「夏バテを防ぐ」といった表現は医薬品的な表現にあたります。また、「疲労回復」や「体力増進」などの表現も身体の機能の増強や増進を目的とした表現に該当します。
医薬品的な効果や効能に該当しない「栄養補給」という表現は、文節の前後関係によっては不適切と判断される場合があります。例えば「働き盛り」というような健康状態に関係のない対象年齢等の表現は法律的には問題はありませんが、「病中病後の体力低下」などは医薬品的な表現となります。
なお、「健康維持」という表現や身体の機能の向上を連想させる「健康増進」は、対象の製品が「食品」であることが明確であり「医薬品」と誤認されない場合は違法とはなりません。ただし、特定の疾病の予防に効果があると明記されていない場合でも、漢方薬のような原料の由来から医薬品的な効果を暗示されるものや含まれる成分が医薬品的な効能を期待させるもの、「夏バテの方に」のように症状の対象者を限定し効果を暗示させるものは医薬品的な効果の表現に該当するケースがあります。
薬機法(旧薬事法)で健康食品が取り締まりを受ける理由には、医薬品ではない健康食品に効能効果を表示することで消費者に治療や予防の効果に対する期待を抱かせ、適正な医療を受ける機会を失わせるリスクがあることがあります。
治療を受ける機会を失い、結果的に症状を悪化させてしまうことも考えられます。また、本来は医薬品でないものが医薬品のように販売されると、消費者は医薬品に対する認識を誤って捉えることもあるでしょう。日本国内で製造されているサプリメントは、薬機法(旧薬事法)に基づき製造・販売されていますが、海外で製造されたサプリメントは薬機法(旧薬事法)に配慮されていない可能性があります。
海外ブランドのサプリメントを摂取する時には、注意しましょう。
薬機法(旧薬事法)は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。以前は「薬事法」と呼ばれていましたが、2014年の改正に伴い「薬機法」と呼ばれるようになりました。
薬機法(旧薬事法)は必要に応じて改正が重ねられ、2021年には虚偽や誇大広告について課徴金制度が導入されています。広告の作成や各種メディアでの発信は、今まで以上に表現について注意することが求められます。
課徴金は過失がなくても課されることになっていて、実際に、アフィリエイターが薬機法(旧薬事法)違反で書類送検される事案も起きています。故意でない場合も同様なので、薬機法(旧薬事法)を「知らなかった」では済まされることではなくなっています。
今まで広告やブログなどで見かけることが多かった「個人の感想」といったケースも対象となるため、健康食品に対して医薬品的な効能効果を表現することはしないようにしましょう。
数多くの種類がある健康食品。魅力的な商品も多く、様々な媒体で発信することも多いでしょう。特に夏バテは誰もがなりうる症状であり、幅広い層がターゲットになるものです。
しかし、医薬品的な表現をすると法律に触れてしまいます。
薬機法(旧薬事法)に基づき、虚偽や誇大広告にならないように心がけながら発信したいものです。